
世界的な人気を誇るバルセロナとACミランの「国内リーグ公式戦」が、初めて国外で開催されることになった。開催地であるアメリカ、オーストラリアの人々にとって、憧れのチームの真剣勝負を生で観戦できる絶好の機会だが、サッカージャーナリストの大住良之は、この開催には「大きな危険」をはらんでいると警鐘を鳴らす。どういうことか?
■ビッグクラブの「戦略」に侵された世界
サッカークラブに公共的な使命が義務づけられているドイツを別にして、欧州の強豪サッカークラブは世界の投資家たちの有力な投資対象となり、投資家が経営権を握ることでクラブはさらなる「利益追求」に突き進む方向にある。クラブが「本来のマーケット」を超えて「世界戦略」に走るのは、まさにこうした流れから言えば当然のことだった。
そして今、世界はこうした欧州のビッグクラブによる「戦略」にすっかり侵されてしまっている。世界のどの町に行っても、FCバルセロナやパリ・サンジェルマンのユニフォーム姿で闊歩する若者を見ることができる。子どもたちも、こうしたクラブのレプリカ・シャツで遊び回っている。
もちろん日本も例外ではない。Jリーグなどに見向きもしない若者たちが、イングランド王者のリバプールがプレシーズンの「市場開拓」のための「顔見せ試合」に来るというだけで、横浜の日産スタジアムに「Jリーグ主催試合記録」の6万7032人も集まってしまうのである。