大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第168回「もうひとつの生命の危険」(1)クラブW杯で「2時間にも及んだ」試合中断、国立競技場では「中断されなかった」ドカンドカン落ちる中での代表戦の画像
ほとんどのスタンドが「野ざらし」状態だった旧国立競技場。この会場で…。©Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカーにおける「もうひとつの生命の危険」。そう、「猛暑」だけがサッカー関係者の生命を脅かすわけではないのだ。

■生死よりも「ずっと重要」な問題か

「ある人々は、サッカーは生か死かの問題だと言う。彼らは間違っている――。サッカーは、それよりずっと重要だ」

 イングランド・サッカー界のレジェンドのひとりであり、リバプールを強豪に育て上げた名将ビル・シャンクリーの言葉である。1959年から1974年まで15シーズンにわたってリバプールを指揮し、数々のタイトルを獲得した。

 だが、もちろん、サッカーは生命をかけて行うようなものではない。サッカーは、プレーする者、それを見る者たちの喜びのため、すなわち人生のために行われるものであり、気持ちとしてはシャンクリーの言葉に強く惹かれるものがあるが、生命の危険があるなら、サッカーどころではないと思うのである。

 前回は、サッカーを脅かすもの、「暑さ」についての話だった。今回は、FIFAクラブワールドカップでもうひとつ問題になったもの、「落雷」の話である。

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