
史上最高と称されたサッカー・ライターが亡くなった。サッカージャーナリストの大住良之が、その足跡を辿る。
■欧州選手権における「初対面」
私が初めてブライアン・グランヴィルに会ったのは、1992年の欧州選手権(スウェーデン)のときだった。賀川浩さん、そしてカメラマンの今井さんと一緒にマルメからイェーテボリに向かう列車に乗ると、ひとつのコンパートメントで年配のジャーナリストが若い記者に囲まれて話をしているのに出会った。
賀川さんはすでにグランヴィルと知り合いだった。すぐにコンパートメントのガラス張りのドアをノックし、グランヴィルにあいさつした。そして私たちを紹介してくれた。
「グランヴィルさん、『ワールド・サッカー』でのあなたの記事をいつも楽しみにしていますが、ときどき難しい英語にぶつかり、苦労しています」
と正直に話すと、彼は笑いながら「そうかね」とうなずき、「申し訳ないが、私は日本語が書けないんだ」と言った。