
史上最高と称されたサッカー・ライターが亡くなった。サッカージャーナリストの大住良之が、その足跡を辿る。
■ブライアン・グランヴィル逝去
1950年代からイングランドの「サッカー・ジャーナリズム」をリードしてきたブライアン・グランヴィルが5月16日に亡くなった。93歳だった。
日本でも、『ブライアン・グランヴィルのワールドカップ・ストーリー』という著書(2002年、新紀元社刊)がよく知られている。
この本は、1973年、翌年の西ドイツ・ワールドカップの前年に、英国で『The Story of the World Cup』 として発刊され、以後、1980年、1984年、1993年、そして1997年と改訂を重ねてきていた。英国でも世界サッカー史の貴重な資料として高い評価を受けてきた1冊である。
それをグランヴィルの友人でもあった故・賀川浩さんが中心になって日本語版の制作にあたり、1998年に草思社から『決定版 ワールドカップ全史』として刊行。「新紀元社版」は、それを引き継ぎ、1998年フランス大会のレポートを加えたものだった。「草思社版」も「新紀元社版」も、田村修一、土屋晃、田邊雅之、近藤隆文の各氏が翻訳を行い、全体の監修を賀川さんが担当した。
グランヴィルは英国の『サンデー・タイムズ』紙と『ワールド・サッカー』誌で半世紀以上にわたって健筆をふるい、イタリアの新聞やアメリカの雑誌も舞台に活躍した。アメリカン・フットボールで「史上最高のライター」と言われるポール・ジンマーマン(1932~2018)という人は、グランヴィルを「史上最高のサッカー・ライター」と評価している。