【“大混戦”から徐々に開きつつある差……J1序盤戦の勢力図(1)】鹿島、柏、京都がトップ3に。鹿島は采配&ベンチ力で勝負強さを、柏は“対策”に屈せず、京都はテクニカルな奥川雅也も存在感の画像
京都サンガF.C.の奥川雅也、鹿島アントラーズの鈴木優磨と鬼木達監督、柏レイソルの小泉佳穂 撮影:中地拓也

 例年に比べても”大混戦”と言われて始まった今シーズンのJ1だが、第16節を終えた段階でやや差が開いてきた。鹿島アントラーズが直近6連勝を飾り、まるでV字を描くように、首位に再浮上。16試合で勝ち点34はシーズン換算で81に値する。昨シーズンのヴィッセル神戸が72だったことを考えても、かなりハイペースだ。

 鹿島の戦いぶりを見ると、鬼木監督の1つ1つの試合は決して簡単ではなく、接戦をものにしている傾向が強い。特に3連敗の後の6連勝は、3−0で完勝したアウェーの横浜FC戦を除くと、全て1点差の勝利であり、3試合は後半に勝ち越し点を決めている。それだけ勝負強さを発揮できる理由の1つに鬼木達監督の采配があるのは間違いないが、ベンチから流れを引き寄せる役者が揃っていることも大きい。
 ただ、その鹿島も全てプラン通りに進んでいるとは言えず、昨年ベスト11の濃野公人やサイドアタッカーの師岡柊生、主力センターバックとして植田直通とともに鹿島の守備を支えてきた関川郁万の離脱は非常に痛いところだ。また序盤戦の躍進を支えた小池龍太が、5月3日の町田戦まで5試合欠場するなど、主力選手の怪我も度々起きている。
 そういった状況でも本職センターバックの津久井佳祐が急きょ、右サイドバックで相手のサイドアタッカーを完封する働きを見せたり、中盤のやりくりが難しくなってきたところを三竿健斗が力強くカバーしている。誰かが欠ければ誰かが埋めるという流れを繰り返しながら、いつの間にか選手層も厚くなっている好循環に変えている。
 5月11日の川崎戦ではレオ・セアラに代わって投入された田川亨介が、その3分後に鈴木のスルーパスから逆転ゴールを決めた。鈴木優磨とレオ・セアラという前線の二枚看板はいるが、日替わりでヒーローが出ているのは現在チームとして非常に良い状況だろう。接戦で勝ち点3を引き寄せるチーム力に説得力はあるが、厳しい時間帯にGK早川友基の好セーブや植田直通を中心とするディフェンス陣のブロックが救っているところもあり、ちょっとした隙が悪いサイクルの転機になってしまう可能性もある。

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