大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第163回「ヴァンフォーレ甲府は三角形にすべし」(1)FAカップ決勝戦で生まれた「伝説」、アーセナルGKが「試合前にユニフォームを洗濯する」理由の画像
ヴァンフォーレ甲府に驚きの提案をするのは、サッカージャーナリストの大住良之。その意味は? 撮影/中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「ピッチの風見鶏」について。

■世界最古の大会「たった一度」の奇跡

 ヴァンフォーレ甲府にひとつ提案がある。ホームのJITリサイクルインクスタジアム(山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場)で使うコーナーフラッグを、三角形にするのだ―。

 まあ聞いてほしい。イングランドのサッカー界にひとつの「伝説」がある。

「FAカップで優勝したことのあるクラブは、通常の四角ではなく、三角形のコーナーフラッグを使用することができる」

 話の発端は、1世紀近く前、1927年までさかのぼる。この年の4月27日に、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われたFAカップの決勝戦で、カーディフ・シティがアーセナルを1-0で下し、初優勝を飾った。カーディフは言わずと知れたウェールズの首都である。「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」を構成する4つの「国」のひとつの首都なのである。

 だが、カーディフ・シティは歴史的にイングランドのサッカーリーグに出場し、イングランドの「FAカップ」にも参加を認められてきた。FAカップが「イングランドの外」に持ち去られたのは、世界最古の大会として1871年に始まってから今日に至るまで、この1回だけということを考えれば、この1927年のカーディフ・シティの優勝がいかに大きな事件であったか、理解できるのではないだろうか。

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