■12歳の年に「アヤックス」入り
では、リヌス・ミケルスとは、どんな人物だったのか。
フルネームは「マリヌス・ヤコブス・ヘンドリクス・ミケルス」。「リヌス」はファーストネームの「愛称」である。1928年2月9日、アムステルダムの「オリンピアウェグ」という通りで生まれた。彼が生まれてすぐ、この年の7月から8月にかけて開催されたアムステルダム・オリンピックの主会場となった「オリンピック・スタジアム」のすぐそばの地区である。
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の不安定な時期。翌年にはニューヨークの株式大暴落を契機に世界的な経済大恐慌が起こり、やがてドイツではナチスが躍進して、さらに世界を不安定な状態に置いていた。しかし、リヌスの父ピートは安定した収入を持ち、1937年、リヌスの9歳の誕生日には、サッカーシューズとアヤックスのユニフォームをプレゼントしたという。
大柄で運動能力に優れていたリヌスは、水泳やバスケットなどさまざまなスポーツを好んでいたが、父ピートはアムステルダムの強豪クラブ、アヤックスの役員であったヨープ・ケーラーと親交があり、アヤックスの熱心なファンだった。その影響でリヌスはサッカーにのめり込むようになり、1940年、12歳を迎えた年にアヤックスの少年チームに入った。