■「自分から叩くよ、なんて絶対に言えない」
その後、旗手怜央も小林悠に倣って金通訳にお願いするように。そして、脇坂泰斗、佐々木旭らが“常連客”となっていく。
背中に手を当てる、ということでは全部共通しているが、それぞれに違いもある。旗手怜央からは「とにかく強く」と依頼されたことで、自ら手が痛くなるほどに気合いを入れる。逆に脇坂泰斗は、背中を押すような感覚だという。佐々木旭は「強く気合を入れてください!」と頼まれた経緯もあってしっかり強め。このように、選手のオーダーに合わせて試合に送り出す。
そのルーティンの「意味」について金通訳に聞くと、少し間を空けてこう答える。
「“託す”想いがありますよね。言ったら、僕は何もできない。試合前はなんでもやりますけど、試合が始まったら選手に託すしかない」
ただし、「自分から叩くよ、なんて絶対に言えない。頼まれてやるだけ。自分からなんて、おこがましいですよ」とも言う。
言葉と両手で選手に想いを託す金通訳。ピッチ外で戦うその姿にも注目してほしい。
(取材・文/中地拓也)
【その6「石田亮太広報」へ続く】