
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「忌避」され、「邪道」と言われ、使われなくなった「キック」…。
■トーキックが「多用される」競技
「トーキック」は、強いインパクトを与えるときだけに使うものではない。とっさに足を伸ばしてつま先でボールにタッチし、相手に先んじてプレーするという目的で使われることがある。これは現代のサッカーでも試合のなかでごく当たり前に1試合に何十回も出てくるプレーである。相手が「取った」と思って足を出す直前に伸ばしたつま先でちょんと触れ、前に出す。ペナルティーエリアでこれをやると、DFの「空振りタックル」が足にかかり、PKになることも少なくない。
つま先で力いっぱい蹴る「トーキック」が重要な技術として考えられ、多用されている競技がある。フットサルである。とくにシュートの場面ではトーキックが威力を発揮し、その巧拙が勝負を決すると言ってもいい。フットサルのボールは小さいため、中心をとらえやすいのだろうか。
国立スポーツセンターの尾崎宏樹さんが2011年に発表した研究によれば、Fリーグに所属するチームの5人のキックを計測したところ、「トーキック」のほうが「インステップキック」よりも初速度の速いシュートが打てていたという。具体的な数字を見ると、「トーキック」は秒速約30キロ、「インステップキック」では秒速25キロほどの計測結果が出ている。
フットサルはコートが狭く、シュートを打つスペース(=時間)も限られている。「トーキック」が多用されるひとつの理由は、「インステップキック」と比較して、コンパクトに足を振ることができるということだろう。これは、ロナウドのトルコ戦のゴールを考えると理解しやすい。