■思いがけない変化を生む「ブレ球」

 この尾崎さんの研究では触れられていないが、もうひとつ、ボールの真ん中ではなく、ほんのわずかボールの中心から外れたところにインパクトポイントを置くことで、思いがけない変化を生むことも、フットサルで「トーキック」が多用される理由だ。いわゆる「ブレ球」を蹴ることができるのだ。

 ヨハン・クライフがペナルティーエリアの右から「ややアウトぎみのトーキック」で見事なシュートを決めた映像を見たことがある。彼が現役を退く1、2シーズン前、10数年ぶりにオランダのクラブに戻り、アヤックスでプレーしていたころの話である。

 クライフはドリブルでペナルティーエリアに入り、ゴールエリアの右外、角度のないところまで持ちこんだ。何をするのかとスタンドの観衆が息をのんだ瞬間、彼は体をやや左開きにして右足を振り、つま先のやや外側、「第3趾」から「第4趾」のあたりでボールをとらえた。ボールは3メートルほどの高さに上がり、落下しながら右に曲がってゴール左上隅に吸い込まれた。

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