■JFA技術委員長と清水エスパルスGMの共通点

 反町GMはJFA技術委員長在任時には、「目前の勝利を目ざしつつ、5年後、10年後のサッカー界」を見据えた。その詳細は昨秋発売の著書『サッカーを語ろう 日本サッカー協会技術委員長1457日の記録』(小学館)に書き込まれているが、「仕事のスタンスとしては、現在も大きくは変わらない」と反町GMは言う。

「JFAの技術委員長としては、目前の試合に勝たなきゃいけない、 次のワールドカップで勝たなきゃいけないのと同時に、4年後、8年後、12年後のワールドカップを考えていました。そうした代表強化に加えて、選手育成、指導者養成、普及を同時進行させていった。

 エスパルスでもトップチームだけでなく、指導者をどうするのか、次シーズンの選手獲得をどうするのか、アカデミーの強化方針をどうするのかといったことを、昨年5月の就任時から進めています。

 その仕事を広義で捉えると、静岡県のサッカーの発展にもつながっていく。県内にはエスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFC、アスルクラロ沼津と、Jクラブが4つある。この4チームで若手選手中心のリーグ戦をやれないだろうか、との構想を描いています。

 JリーグのUー21リーグ構想に反対するといったわけではなく、もっと物理的に近いところで若い選手の出場機会を増やそう、緊張感のあるゲームをしよう、ということです。

 かつてFC東京ガンバ大阪セレッソ大阪が、U-23チームを作ってJ3リーグに参戦した時期がありました。その当時試合に出ていた堂安律久保建英が、現在の日本代表の主力になっている。真剣勝負から学ぶものはある、ということです」

 25年シーズンの目標について、清水エスパルスの山室晋也代表取締役社長は「確実に10位以内に入りたい」と記者会見で明かした。反町GMは「J1の各クラブの経営規模を考えると、少なくともそこは目ざすということです。当然ながら、シーズン中に上方修正できるように」と補足する。

「昨シーズンのJ2全日程終了後、J1の試合へ足を運びました。スピード感、デュエル、インテンシティは、J1とJ2ではやはり差があると感じました。我々はJ2で2シーズン戦って、J2に慣れてしまったところはある。それは否めないので、今シーズンの開幕時点でJ1とのギャップがないところまで持っていくことが大事です。そういう認識のもとで、覚悟を持って準備していく。現場に対して注意喚起をしていきます。

 J1リーグを見ていて感じるのは、縦に速いサッカーを目ざすチームが増えている。それについては、メディアにも指摘したいことがありますね」

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(2)へ続く
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