サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は「3人と2人じゃ大違い」。あるルールの変更で、サッカーが世界中で愛されるスポーツになったという。もしかしたら、ペレも、マラドーナも、メッシも、クリロナも、そしてエムバぺも、ヤマルもサッカーをやっていなかった可能性すらある、意外と知らない「サッカーの大革命」にスポットを当てる!
■なぜ、これほど「長命」だったのか
なぜ「ピラミッド・システム」はこれほど長命だったのか。それは攻守のバランスが非常によく取れていたからだ。3人の「ハーフバック」のうち、中央の選手(センターハーフ)は中盤を幅広く動き、5人のフォワードのサポートをするとともに、守備に回ったときにはセンターフォワードをマークするという役割をも担った。「センターハーフにサポートされた5人の攻撃」対「センターハーフが衝立のようになる5人の守備」―。「ピラミッド・システム」は、改善すべきところのない、「完璧なシステム」だったのだ。
さらに言えば、仮に「センターハーフ」の守備が間に合わない場合にも、「3人オフサイド制」により、2人の「フルバック」の巧みなポジショニングで、そう大きなリスクをかけないでも相手の攻撃を無効化することができたことも、このシステムが長生きした要因だった。
たとえば相手が「センターフォワード」にパスを出す直前に、2人の「フルバック」のうち1人が前進する。「オフサイドトラップ」である。それによって、最後のフルバックが目の前にいる状況でも、センターフォワードはオフサイドになってしまう。実際、このシステム下の試合では、オフサイドトラップが多用され、やすやすと守れてしまっていた。