大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第154回「2025年はサッカー革命100周年!」(2)30年間否決され続けた「2人制」、アーセナル本拠地で行われた2つの「試験試合」と革命後のゴール数の画像
史上最多となる6度目のEURO出場を果たしたクリスティアーノ・ロナウド(クリロナ)。サッカーという競技が、100年前のルール変更を経て成熟していなければ、彼のようなスーパースターは生まれていなかったかもしれない。撮影/原壮史(Sony α1使用)
■【画像】サッカーに革命をもたらした「変更」と【図解】「革命前」と「革命後」のオフサイドライン

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は「3人と2人じゃ大違い」。あるルールの変更で、サッカーが世界中で愛されるスポーツになったという。もしかしたら、ペレも、マラドーナも、メッシも、クリロナも、そしてエムバぺも、ヤマルもサッカーをやっていなかった可能性すらある、意外と知らない「サッカーの大革命」にスポットを当てる!

■なぜ、これほど「長命」だったのか

 なぜ「ピラミッド・システム」はこれほど長命だったのか。それは攻守のバランスが非常によく取れていたからだ。3人の「ハーフバック」のうち、中央の選手(センターハーフ)は中盤を幅広く動き、5人のフォワードのサポートをするとともに、守備に回ったときにはセンターフォワードをマークするという役割をも担った。「センターハーフにサポートされた5人の攻撃」対「センターハーフが衝立のようになる5人の守備」―。「ピラミッド・システム」は、改善すべきところのない、「完璧なシステム」だったのだ。

 さらに言えば、仮に「センターハーフ」の守備が間に合わない場合にも、「3人オフサイド制」により、2人の「フルバック」の巧みなポジショニングで、そう大きなリスクをかけないでも相手の攻撃を無効化することができたことも、このシステムが長生きした要因だった。

 たとえば相手が「センターフォワード」にパスを出す直前に、2人の「フルバック」のうち1人が前進する。「オフサイドトラップ」である。それによって、最後のフルバックが目の前にいる状況でも、センターフォワードはオフサイドになってしまう。実際、このシステム下の試合では、オフサイドトラップが多用され、やすやすと守れてしまっていた。

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