■「相手もファールを怖がると思った」

「そうですね。コンディションも悪くなかったですし、ボールを受けたときにショートカウンター気味に、(前方に)スペースがあった。自分がそこに入ることで、相手もファールを怖がると思った。ああいうプレーを毎試合やらないといけない。そこからシュートを打ち切るくらいのところまでやらないと」
 筆者は、もう少し深く聞いてみた。ブライトンは、直近5試合で3分2敗と勝利がない。前々節のクリスタルパレス戦では、相手のパワープレーに対処できず1−3で敗戦。前節ウェストハム戦ではチーム全体に力強さがなく、1−1で引き分けた。そこで筆者は、
「意識の変化は、過去5戦で勝利がない状況を踏まえてのものだったのか。それとも監督から指示があったのか」
 と尋ねた。三笘は胸の内を明かす。
「(監督からの指示として)そういったところは何もないです。5試合で結果が出なかったので、自分自身、いろいろと考えたり、見つめ直したりしました。 チームとしてやりたいことと、自分がやらないといけないことの区別が難しかったところはありましたけど。ただ良くも悪くも、結果が最終的な判断になると思う。結果が出れば、OKだったと思います。それを次でやるしかない」

 ドリブル突破に目を奪われがちだが、三笘薫という選手は非常にクレバーなプレーヤーである。戦術理解が深く、監督の指示も忠実に実行する。特に今シーズンから指揮を執るファビアン・ヒュルツェラー監督は、前線の選手に対し、守備を徹底させている。三笘も例外ではなく、相手ボール時には自陣深くまで下がってディフェンスに走る。

 ただ、こうした守備タスクの多さや、戦術の枠組みからはみ出すことのない謙虚な姿勢が、日本代表MFの怖さを少し減らしているように思えてならなかった。「ここは勝負所」と、三笘のドリブル突破を期待する場面でも、ボールロストを嫌がるのか、仕掛けることなく、味方へボールを預ける場面が今季は少なくない。もちろん、ドリブルからチャンスを呼び込む場面もあるが、たとえば加入1年目の2022−23シーズンに比べると、その頻度は著しく減った。少し乱暴な言い方をすれば、こうした違いが18節終了時で3ゴール、2アシストという、少し寂しい成績につながっているように思えてならなかった。

 実際、自身の役割について、三笘は次のように説明したことがある。

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