■「もどかしいかもしれないですけど…」

 今から約1か月前のボーンマス戦(11月23日)。この試合で守備に追われるシーンが多かったことについて聞いてみると、三笘は「まずは守備からやる必要がある。見ている人にはもどかしいかもしれないですけど、僕としてはチームとしてやるべきことをやっているつもり」と話した。チーム戦術の枠組みの中で、自身のストロングポイントを出していくと、三笘はそう力を込めていた。

 ところが、ここに来てブライトンが勝てなくなった。前節ウェストハム戦では、三笘も効果的な働きをあまり見せられず、試合後のミックスゾーンでも落ち込んでいる様子だった。

 こうして迎えたのが、今回のブレントフォード戦だった。筆者は、同じテーマでもうひとつ質問を重ねた。
「三笘選手が見せた前半の仕掛けは、『チームのバランスを少し崩してでもやろう』という考えの表れだったのか」
 と。三笘は次のように返した。
「そうですね。前回のウェストハム戦は、チームのやるべきことをやった上で、自分の長所をなかなか出せなかった。毎試合、いろいろと考えを巡らせながらやってますけど、実際は何が正解かわからないですね」
 守備をこなした上で、攻撃を仕掛ける──。ここまでの三笘は、チーム戦術を忠実に遂行してきた。だがチームが勝てなくなったことで、三笘は「自分を見つめ直した」と言う。前半に見せた積極的なプレーは、チームとして、そして三笘個人としても、何かを変えたいという気持ちの表れだったのだ。
 前半のパフォーマンスは、たしかに素晴らしかった。長い距離をドリブルで走る三笘のアタックは、チームの推進力となって攻撃に勢いを与えた。

 一方で試合が0−0のスコアレスドローに終わり、ブライトンの未勝利は6試合に伸びた。三笘個人にフォーカスしても、後半は危険なプレーが減った。その後半、中2日に行われる30日のアストンビラ戦をにらみ、今季最短の後半22分で交代を命じられた。交代時の三笘は、首を左右に小さく振って納得がいかない様子であった。
 試合後「最後までプレーしたかったですね」と聞いてみると、三笘は「もちろんそうですが、後半のプレーなら妥当かなと思います」と短く答え、後半の内容から考えれば早い時間での交代も仕方ないと話した。
 ただ、前半に見せた積極的な仕掛けには、三笘の“らしさ”が凝縮されていたのは間違いない。今後の課題は、いかに自身のアタックを結果につなげていくかになるだろう。
「次でやるしかない」と三笘は言う。ブライトンの次戦は、敵地で行われるアストンビラ戦。ここで、自身の活躍でブライトンを7戦ぶりの勝利に導くことができるか。後編(2)に続く。

(2)へ続く
  1. 1
  2. 2
  3. 3