■「苦しまずして栄光なし」
一方で、「苦しまずして栄光なし」という言葉もある。今の時代は親から怒られたことのないという子供もいるだろうが、他者からの指摘は耳が痛い部分もあるが、改善へのヒントになったりする。多少の苦しみがなければ新たな気づきを得られない。それは多くのトップアスリートも感じているはずだ。
そうやって苦しみながら、日々の積み重ねをしっかりした人間だけが成功を手にできる。古沼監督は「今日の汗、明日輝く」という言葉が一番好きだと言うが、それは教え子の平岡TAも大事にしていることだという。
大津の「凡事徹底」というスローガンも、そんな名伯楽の考え方が大きく影響しているに違いない。谷口彰悟(シントトロイデン)や植田直通(鹿島)の頃は実際に古沼監督が大津に赴いて指導することも頻繁にあったが、そのDNAは高校サッカー、Jリーグ、日本サッカー界へと引き継がれている。その意味を大津の高円宮杯優勝を機に今一度、考えてみることも重要ではないか。
(取材・文/元川悦子)