■香川真司が松井大輔からもらった言葉
もう1人の香川真司も今季はJ1・10試合出場1ゴールという不本意な結果に終わった。「ピッチに立つ元代表10番の姿を見たのは久しぶり」と感じた人も多かっただろう。
「この1年を振り返った時に思うところは沢山あった。それを自分の中でしっかりと考えて次の準備をしたい」と本人も悔しさをにじませつつ、来季以降を見据えていた。
不完全燃焼感の残るシーズンだったがゆえに、久しぶりに代表時代の面々と再会したこの引退試合はいい刺激になったのではないか。香川はスタートから遠藤保仁(G大阪トップコーチ)とボランチを形成。代表時代の香川は2列目を主戦場にしていたから、偉大な先輩とボランチを組む機会はなかった。見る側にとっても「夢のコンビ」だったのは確かだ。
「ボランチで試合を組み立ててコントロールする能力はヤットさんには叶わない。やっぱりダブルボランチは長谷部(誠=日本代表コーチ)さんとヤットさんが”鉄板”じゃないですか。むしろ指導を受けてみたい気持ちの方が強いです」と意欲を示していた。
一方で松井とも短時間だったが、ともにプレーした。松井と香川は岡田武史監督(FC今治会長)時代の代表ではつねにギリギリの立ち位置。南アW杯出場を決めた2009年6月のウズベキスタン戦(タシケント)では2人揃ってスタンドから試合を見つめることになった。
「当時、松井さんには飛行機で隣になった時なんかに『海外に行けるなら早く行って方がいいよ』って話をしてもらった。あの時の自分は若かったし、海外でプレーしている選手が少なかったので、あの一言はすごく覚えている。海外を志す気持ちが芽生えました」と20歳の頃の情熱を思い出したという。
サッカーへの飽くなき向上心は年齢を重ねた今も持ち続けられるはず。2024年の屈辱を糧に香川真司はどんなキャリアを踏み出すのか。セレッソに残留するか否かを含め、その動向が気になる。
吉田と香川はまだまだピッチ上で活躍できるはず。30代後半の底力を遺憾なく発揮することを松井も強く望んでいるに違いない。
(取材・文/元川悦子)