■中村憲剛へのリスペクト

「面白かったです。憲剛ともプレーできたし、やっぱり懐かしいです」
 数分ではあったが、選手として引退試合のピッチに立った指揮官は、中村憲剛とのプレーをこう振り返る。
「独特っていうか、なんかもう“(ボールが)絶対来るんだろうな”とか、そういうのはありましたね。なんか、良かったです」
 チームを支えてきたゲームメーカーとのプレーを、こみ上げる感情の中でなんとか言葉にしようとすれば、
「心残りがあるとすればあの崩しを成功させたかった(笑)」
 と、冗談を入れることも忘れない。
 しかし、中村憲剛という教え子、そして、後輩に対してのリスペクトとスゴみについては、しっかりと言葉にする。
「憲剛じゃないと、今日のような人の集まり方(はできない)。改めて憲剛の人柄の良さが、やっぱりここまでの大きな試合にしたんだなって。こんなに大きな試合は簡単なことじゃないじゃないですか。なおかつ、(観客も)満員に呼べて。
 もう一つ、僕はやっぱり憲剛らしいなっていうか、感動したのは、やっぱり亡くなったあの2人に対してのリスペクトというか。ちょっともう込み上げてくるものが、こうやってしゃべっててもちょっと来ちゃうぐらい、そういうのも含めて、憲剛だからできたことかなっていうのがあるので、すごく何だろう。
参加させてもらって本当良かった」
 この試合の途中、プレーを止めたうえで2人の故人に想いを集めた場面があった。アルトゥール・マイア氏と横山知伸氏に対するもので、自身の引退試合で改めて彼らに光を当てたことに、指揮官は心を打たれていた。
 そして、「本当に最後、こういう形でいろんな人に憲剛のプレーを見てもらえたことは本当に良かったですし、誘ってもらえて嬉しかったです」と笑顔を見せた。

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