ミックスゾーンは多くの人で賑わっていた。何せ、出場選手は100人以上。加えて、取材に訪れたメディアの数もとても多い。それだけに、輝かしい日本代表のキャップ数を持っていても、記者に見つからないままに出口へと歩みを進めてしまう選手もいたほどだ。
12月14日に行われた、中村憲剛の引退試合後の等々力競技場。その取材エリアに、鬼木達監督も姿を見せた。通常、監督の立場ではミックスゾーンを通らない。監督の取材対応は記者会見で行われるためなのだが、この引退試合ではその監督会見がない。しかも、鬼木監督はこの試合に“選手”として出場していた。つまり、「出場選手」としてミックスゾーンに足を踏み入れた。
ちょうどその時刻、試合の主役である中村憲剛が会見を行っていたため、記者はミックスゾーンに少なくなっていた。柔和な表情で取材に応じた鬼木監督の前に、ICレコーダーを差し出して“最後の取材”を行った。最終節のアビスパ福岡戦前後、そして、川崎市市民特別賞の受賞時に話を聞いたが、今年の残りの日程で、鬼木監督が川崎フロンターレの一員として表に出る予定はない。きっと、次に取材をするときは、すでに発表されている鹿島アントラーズの監督としての立場としてのはずだ。