すっかりサッカーの一部となった、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)。だが、そのテクノロジーを十分に有効活用できているかどうかは疑わしい、と言うのは、サッカージャーナリストの後藤健生。その問題点について、Jリーグの優勝争いの一戦を使って検証を試みる!
■なぜオフサイドだけ「厳密」なのか
では、武藤嘉紀の同点ゴールの場面はどうなのか。
オフサイド・ラインぎりぎりの攻防であり、また、オフサイド・ポジションにいた選手がプレーに関与したか否かという難しい判断を迫られたことは事実だ。だが、それにしても約4分というのは明らかに長すぎるのではないだろうか。
もう一つの論点としては、ピッチ上の審判団が下した「オフサイド」という判定が「はっきりとした、明白な間違い」だったかどうかという点だ。
もしそれが「はっきりとした、明白な」事象だったとしたら、判定を下すまでに4分もかかるわけはない。「はっきりしない」、「明白ではない」からこそ、判定に時間がかかるのではないか。
だが、オフサイド判定に限っては、明白ではない場面でも長時間かけて厳密な判定を下すための努力がなされるというのが、現行のVAR制度なのだ。なぜ、ここだけ「禁欲的」ではないのだろうか?