■戦慄した「A代表のディシプリン」
ひとつのシュートに4人もの選手がブロックに飛び込むのは、どうだろうと思う人もいるかもしれない。しかし、2人が倒れたままだったサウジアラビアは、日本のゴール前に4人の選手を送り込むのが精いっぱいで、日本は7人が守備のポジションについていた。そうした状況の判断もあっただろう。
それにしても、ひとつのボールに4人が飛び込みながら一分の混乱もなく、互いに自分自身の役割をまっとうしつつ、巨大な猛禽(もうきん)類のように一体となって動く、それも2プレー連続してできるのは尋常ではない。この一連のプレーに戦慄(せんりつ)しない人がいるだろうか。
中盤でボールを受けたムサブ・アルジュワイルがパスを出そうとした<シーン1>の瞬間が、DAZNの中継映像の時間表示で「26分48秒」。右から入ってきたアイマン・ヤハヤのシュートを遠藤、板倉、町田、守田の4人がブロックした<シーン4>が「26分58秒」だった。
誰もが一瞬も足を止めず、次のプレー、次のプレーへと動きながら、それでもバランスを崩さず、チームの組織を保ったこの連続プレーに、現在の日本代表選手たちの能力と、何よりも、一瞬もゆるむことのない「ディシプリン(規律)」を余すところなく見ることができる。
まさに「奇跡の10秒間」だった。