J2のヴァンフォーレ甲府が、最終節後の様子をSNSで公開した。スポーツの素晴らしさが伝わる光景に、ファンの間で感動の声が広がっている。
水戸ホーリーホックとの最終節を、甲府としては思い描いた形で迎えることはできなかった。1試合を残して16位に沈んでおり、自動昇格はおろか、プレーオフ進出圏からも遠い位置にいたからだ。
それでも、選手たちは全力でプレーした。それがプロとしての矜持であり、9000人以上も訪れたファンに応える唯一の道だったからだ。
その気持ちは、開始6分での先制点となって表れた。前半のうちに追いつかれたが、後半開始から2分で再び勝ち越すと、7分後には追加点。3-1で今季最終戦を飾った。
試合後も、見どころは続いた。スポーツの素晴らしさを感じさせる光景が広がったのだ。
甲府の対戦相手である水戸のGK本間幸司は、今季限りでの引退を表明していた。1996年にプロとなり、29年間もプレーを続けてきた末、スパイクを脱ぐことを決めたのだ。
キャリアのほとんどを水戸で過ごし、J1での出場こそなかったが、J2通算577試合に出場。もはや水戸のみならず、リーグにおけるレジェンドだ。
その47歳の大ベテランGKは、先発フル出場した前節に続いて、この最終節でもチームに帯同。出場こそなかったが、ベンチで選手として自身のキャリアと試合終了を告げる笛を聞いた。
本間としては勝利を見届けてラストゲームを終えたかったはず。さらには出場して華を添えたかったはずだが、しっかり花道は用意されていた。ホームチームとして水戸を迎えた甲府が、粋な計らいを見せたのだ。
試合終了後のピッチに、本間が連れられてくる。率先してセンターサークルに呼び込んだのは、甲府の選手たちだった。さらには甲府FW三平和司が音頭を取って、胴上げを実施。チーム関係なく「仲間」の手によって、本間が数度、宙に舞った。
さらには甲府のスタンドも、本間に労いの声を上げる。横断幕も見えることから、もともと本間への感謝の気持ちを表す準備をしていたのだろう。近くまで寄って深々と頭を下げる本間に甲府のファンは声をかけ続け、レジェンドも笑顔で手を振りながら謝意を示していた。