■ブレることなく貫いた自分流
ただ、それは時に”両刃の剣”にもなる。GK阿部航斗が蹴ったボールを永井に奪われた決められた前半31分の1失点目はまさにそう。今季もそういった新潟対策を講じられ、失点するケースがしばしば散見されていた。
しかも、前半終了間際にも追加点を奪われ、前半だけで2点のビハインドを背負うことになったわけだが、松橋監督は決して怯まなかった。「『舞台が整った』くらいの気持ちでやろう。これをひっくり返すんだ」と選手たちをハーフタイムに鼓舞。ブレることなく自分流を突き詰めていったのだ。
指揮官の強気の姿勢が後半26分の谷口海斗の1点目を呼び込み、後半終了間際の小見洋太のPK奪取につながる。これを小見自身が決め、延長戦に突入。そこでも小見にPKを献上した中山克弘に先手を取られ、崖っぷちに追い込まれたが、延長後半6分にカウンターから小見が起死回生の同点弾をゲット。3-3でPK戦という状況まで持ち込んだのだ。
驚異の粘りが結果に結びつけば最高のシナリオだったのが、新潟は2人目の長倉幹樹がまさかの失敗。これでクラブ初タイトルを逃してしまった。もちろん長倉は号泣。表彰式まで涙を流し続けたが、秋山筆頭に彼を励ます姿は人々の感動を誘った。
「決勝だからって自分たちは別のサッカーをするつもりはなかった」という秋山の発言に象徴される通り、新潟の独自スタイルを貫く勇敢な戦いぶりには、多方面から称賛の声が贈られたのだ。