■「本当に感謝の思いしかありません」

 鬼木監督の指導を受けた4年間で、もっとも印象に残っているやり取りは――こう問われた橘田は、再び数秒感の沈黙をへた後にこんな言葉を紡いでいる。
「……自分が入ったときから練習でも、試合中でも、ミーティングでも、常に高い要求をしてくれた。ときには『他の選手だったら出さないような指示も出している』とも言っていただいた。自分のことを常に思ってくれって、本当に細かいところまで指導してくださったこの4年間には、本当に感謝の思いしかありません」
 指揮官が寄せる大きな期待の表れだったのだろう。プロ3年目を迎えた昨シーズンに、橘田はキャプテンに指名された。しかし、後半戦こそ盛り返したものの、プレー時間は2022シーズンの2742分から1888分へと大きく減らした。
 今シーズンの開幕を前にして、新キャプテンにMF脇坂泰斗が就任している。交代にいたるまでの鬼木監督とのやり取りを、橘田はこう明かす。
「プレーに専念してほしい、といった話をしていただきましたし、自分からもそういう話をしました。そういう(自分への)配慮をしてくれたと思っています」
 迎えた今シーズン。アンカーやダブルボランチの一角に加えて、左右のサイドバックとしても橘田はフル回転してきた。ガンバ戦でも山本悠樹とのボランチで先発し、アタッカー4人が同じ投入された67分からは右サイドバックに回っている。
 自分にできる精いっぱいのプレーをしてきた。ただ、チームが2シーズンぶりの国内三大タイトルでの無冠が決まった非情な現実が目の前にある。

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