スポーツ競技で勝つためには、心身の充実が必要だ。フィジカル、メンタルともに相手を上回ってこそ、勝利を手にできる。もしも、どちらかが欠けていたなら、諸刃の剣となって自分に襲いかかってくることもある。そうした厳しい現実を突きつけられた「サッカー秋の陣」について、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。
■徹底した守備を特徴とする町田が「大苦戦」
FC町田ゼルビアは、徹底した守備を特徴としたチームだ。リトリート(相手にボールを奪われた場合、すぐに自陣に戻って、守備ブロックを形成して守ること)した守備とハイプレスを使い分け、高い位置でボールを奪ってショートカウンターを仕掛ける。そして、勝つためには何でもする。
一方の川崎フロンターレは、ボール・ポゼッションにこだわるチームだ。ショートパスを使って、ボールを握り続けることによって相手陣内にスペースを作り、そのスペースに選手たちが次々と入り込んで攻撃を続ける。
だが、町田戦では川崎がオールコートでプレッシャーをかけ続け、町田のパスを分断した。
川崎が押し込んだ展開の中、町田はサイドバックの杉岡大暉からのボールを藤本一輝が追って、落としたボールをベテランの中島裕希が叩き込んで13分に先制した。見事なカウンターだった。そして、その後、しばらく町田がボールを握る時間ができたが、20分を過ぎると再び川崎が流れをつかみ、川崎の勢いは試合終了まで続いた。