Jリーグは終盤に入っているが、アジアでは新シーズンがスタートした。アジアの頂点を争うAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)が開幕したのだ。大会は、今シーズンから「新方式」を採用しているが、その仕組みは複雑怪奇。サッカージャーナリスト大住良之は「アンチ・サッカー的だ」と、警鐘を鳴らす。その意味するところとは?
■50億人が愛する「最もシンプルな競技」
「The Simplest Game(最もシンプルな競技)」
サッカーにはさまざまな「異称(別の呼び名)」があるが、私はこの表現が好きだ。プレーの目標は明白だ。白く塗られた2つのゴールがあって、11人のチーム同士が互いのゴールにボールを入れようと目指す。「オフサイド」という少しやっかいなルールはあっても、サッカーという競技の本質は、最初に見た人でもすぐに理解することができる。
ボール1個あれば、みんなでプレーでき、シンプルだからこそ、サッカーは世界に広まった。世界人口の80億人中、サッカーのファンは50億人にのぼり、登録された選手数は2億5000万人、うち13万人がプロ選手だという。2022年ワールドカップ・カタール大会の決勝戦のテレビ観戦者は、世界中で15億人に達したと、国際サッカー連盟(FIFA)は報告している。
そのサッカーで、世界に広まった大会方式のひとつに「リーグ戦」がある。もともとアメリカのプロ野球の大会方式で、そこからアイデアをもらったものだが、サッカーでは1888年に初めてイングランドで採用された。力の均衡した一定数のチームが集まり、互いに「ホームとアウェー」で2回ずつ戦う方式は、アッという間に世界の隅々まで浸透し、男女を問わず、あらゆるレベルでサッカーの通年の大会として行われている。