■「いい方向に転がってくれた」と話すリスクのかけ方

 この日の清水は4-2-3-1をベースにしつつ、守備時は3-4-2-1の相手に合わせ、右MF西澤健太が下がって5バック気味になって守るという柔軟な戦い方を見せた。案の定、横浜FCはサイド攻撃を多用してきたが、彼らは粘り強い守りで応戦。前半を0-0で折り返した。

 そして後半。清水はルーカス・ブラガに代えてカルリーニョス・ジュニオを投入し、攻撃のギアアップを図ったが、後半11分に相手の左ウイングバック・中野嘉大のクロスから高橋利樹に打点の高いヘッドをお見舞いされ、クロスバーの跳ね返りをジョアン・パウロに押し込まれてしまう。この失点で清水の選手たちには10カ月前の国立の悪夢が脳裏をかすめたのではないか。

 それでも秋葉監督は3枚替えを実行。途中出場の矢島、宮本航汰らが値千金の同点弾をもぎ取る。それが後半29分の出来事。最終ラインの原輝綺がドリブルで強引に持ち上がり、カルリーニョス・ジュニオに預け、矢島にボールが渡ると、彼は巧みな突破から折り返した。次の瞬間、後方にいたはずの原がゴール前に侵入。GK市川暉記と交錯し、こぼれ球に宮本が飛び込む形になったのだ。

「ああなったら近くのコミュニケーションで剥がすか、個で剥がすかっていうしかないんで、そこはもう博打じゃないですけど、リスクはつきもの。それがいい方向に転がってくれたんで、よかったなと思います」と長い距離を走った原も前向きに語ったが、彼らが意表を突くプレーを見せたからこそ、同点に追いついたのだろう。

 このまま清水は1-1でドロー。勝ち点を72に上乗せし、首位をキープすることに成功したのだ。

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