■「途中から出てきた選手がスイッチを入れて」

「国立で試合をやって勝ったことがない」とフル出場の36歳・乾は苦笑いしつつも、「途中から出てきた選手がスイッチを入れて、しっかり仕事してくれるので、今は本当に助かりますし、チーム全員でやってる感はすごくありますね」と矢島や宮本の働きを称賛した。

 確かに昨季の清水は乾や権田修一ら経験豊富なベテランへの依存度が高かった印象もあったが、今季はキャプテン・北川航也や守備陣の高橋、原、途中から出てきて攻めを加速させる矢島ら多彩な戦力の働きによって、この地位を確保できている。チーム力の底上げが感じられるのは間違いない。

 矢島などは2016年リオデジャネイロ五輪参戦経験もある選手。「プロでやってる以上、スタメンで出るのが当たり前だし、そこで勝負したい」という思いもあるという。けれども、「今のチームが置かれている状況や自分の立場でこういう(ジョーカー的な)使われ方になっている。若い時だったらマイナスのパワーをプラスに変えていたけど、今はチームのために何が大事なのかを考えてやれています」と冷静に自分を客観視しながら、役割を遂行しているという。

 そういったフォア・ザ・チーム精神も今季の清水の成長だろう。それが鬼門の国立で1ポイントを確保。J1昇格に大きく前進した。29日には3位・Vファーレン長崎が敗れ、ついに王手をかけるところまで辿り着いたのだ。

(取材・文/元川悦子)

(後編へつづく)

(2)へ続く
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