ゴールどころかチャンスの匂いさえ、まったく漂っていない状況から、清水エスパルスの同点ゴールは生まれている。ホームのIAIスタジアム日本平にV・ファーレン長崎を迎えた7日のJ2第30節。輝きを放ったのはMF乾貴士だった
長崎に攻め込まれていた50分。DF山原怜音のクリアが相手に当たってコースを変え、自陣の中央にいた乾のもとへわたった。右足を軽くあてたワンタッチでボールを自身の前へと運んだ乾の選択肢は、ひとつだけしなかった。
「ボールを受けた瞬間からと、自分で前へ運ぼう、というイメージがありました。自分がフリーなのも、前にスペースがあるのもわかっていたので」
迷わずにドリブルを仕掛ける背番号33に誰も追いつけない。必死に戻るディフェンス陣もむやみに飛び込めないまま、乾はハーフウェイラインを越えて、一気に長崎のペナルティーエリア前まで、実に60メートル近くを駆けあがった。