「点を決めてこい」
川崎フロンターレの鬼木達監督は、ピッチに入るべく準備をしていた遠野大弥にこう語りかけた。JリーグYBCルヴァンカップ プライムラウンド準々決勝の第2戦、川崎フロンターレとヴァンフォーレ甲府の試合の、後半26分を前にした場面のことだ。
この日、JITリサイクルインクスタジアムには両チームの多くのサポーターが駆け付けていた。ホーム&アウェイで行われるこの準々決勝の第1戦は、川崎が1-0で勝利。川崎のサポーターはこのまま勝ち上がりを決めてほしいと、対する甲府のサポーターは最少失点からの逆転を願って、観客席を埋めていた。
その願いをまずは現実に近づけたのは後者。前半31分に、DF孫大河がセットプレーからゴールネットを揺らしたのだ。川崎サポーターの前で決めたこの得点は、一度は流れを持って行きそうになった。
そんな中で、勝負師の鬼木監督はハーフタイムに交代カードを一枚切る。三浦颯太に代えてファンウェルメスケルケン際を投入。同時に、前半は右SBだった橘田健人を左に配して、ファンウェルメスケルケン際を右サイドバックに置いた。
そのファンウェルメスケルケン際から後半はいいクロスがゴール前に供給されることとなり、90+3分、その何度目かのクロスから遠野大弥が頭で合わせて“決勝ゴール”を決めたのだ。
「あれをやってるためにサッカーをやってるみたいなもんですよね。嬉しかったです」
同点ゴールについて聞いた筆者の言葉に、遠野は満面の笑みでこう答えた。