大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第145回【サッカー界から消えた「フェアプレー」は何色か】(1)クライフ以来の伝統を返上「ダーティにプレーしようぜ」オランダのEUROと大キャンペーンの画像
2024年のEUROでオランダは、準決勝でイギリスに敗れた。撮影/原悦生(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは、黄色か、青か―。

■EUROで「笑った」背中に刻まれた文字

「Let‘s Play DIRTY, Baby!(ダーティにプレーしようぜ!)」

 オレンジ色のTシャツの背中に書かれた太い文字に思わず笑った。古い話で申し訳ないが、2000年にオランダとベルギーの共同開催で行われた欧州選手権(EURO)でのことである。ちなみに、2002年にワールドカップが日本と韓国で共同開催されるが、2000年のEUROは、この規模の大会が複数の国で開催された初めての例だった。

 刺激的な言葉を背中に刻んだオレンジ色のTシャツを着ていたのは、もちろん、オランダのサポーターである。「ダーティなプレー」とはいったい何だろう? 実はオランダには、「プレーは非常に美しいが、結局は勝てない」という定評があったのである。

 その最高の例が1974年に西ドイツで開催されたワールドカップだった。天才ヨハン・クライフを中心とした「トータル・フットボール」は大会を席巻、世界中に衝撃を与えた。ところが決勝戦では手堅く守って速攻を繰り出した西ドイツに逆転負けを喫し、「世界チャンピオン」の座をつかむ絶好の機会を逃した。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4