■大岩剛監督が語るロス世代
その一方で、憂慮するべき事実もある。それはロサンゼルス五輪でベースとなる2005年以降の生まれの選手、すなわち”ロス五輪世代”の選手が、バックアップを含めたメンバーに一人もいなかったことだ。今回の戦いぶりをポジティブに評価した上で、そのことを大岩監督にぶつけると「ロス五輪世代の選手たちをなかなか呼べなかったと言うのは同じように、出場機会がなかったり、基準に達してない。厳しい言い方をすればですけど…」と返ってきた。
「彼ら18、19の世代がもっともっと、我々の世代だけじゃなくてフル代表に入っている世代なので。そういう意味ではもっと基準を上げていく必要がある。それがスペインとの0−3という結果の現状を表しているのかなと思う」
大岩監督にしても、A代表・森保一監督が主張した、10代のタレントの突き上げには期待をかけて、昨年のU-17W杯を戦ったメンバーを含めて”ロス五輪世代”の選手の情報をチェックしていたはず。ただ、パリ五輪で結果を出すことを優先すれば、年齢や成長の期待値だけで、特定の選手を優遇するわけにはいかない。それでも大岩監督が「ものすごく力のある選手なので。我々もリストの中に入っていた」という選手は存在した。
ジュビロ磐田のアカデミー育ちで、現在ベルギーの名門アンデルレヒトに所属するFW後藤啓介と昨年のU-17W杯メンバーの一人であるMF佐藤龍之介(FC東京)だ。後藤に関しては大岩監督も”ラストピース”として追跡していた節がある。佐藤はパリ五輪のトレーニングパートナーとして、開幕直前まで帯同した5日間で、大岩監督の評価を「龍之介は残したなと思いました」と言わしめるほどに高めた。
(取材・文/河治良幸)
(後編へ続く)