■明らかに無謀だった清家貴子の突破から
後半アディショナルタイムの6分、中盤で相手パスをカットした清家がスピードを上げて突破にかかる。これは明らかに無謀だった。ブラジル守備陣は十分、人数がそろっていたからだ。やはり清家は囲まれて止められる。
だが奪ったボールを、ブラジルDFラファエル・ソウザが中盤の選手につなごうとしたパスがわずかにズレた。そこに走り込んでいたのが谷川だった。
躊躇しなかった。迷わず右足を振り抜くと、ボールはGKロレナの頭上を越え、ゴール右上隅に吸い込まれた。30メートルの見事なロングシュートだった。
谷川は2005年5月7日生まれの19歳。2022年にインドで行われたFIFA U-17女子ワールドカップで大活躍し、スペイン戦で強烈なロングシュートを決めるなど、ボランチでありながら圧倒的なシュート力をもつ選手。その能力がまざまざと生きた決勝点だった。
グループ3位でも準々決勝進出のチャンスがあるとはいえ、連敗スタートになると非常に苦しいところだった。それを後半アディショナルタイムの2点で逆転勝利。グループ最終戦の相手ナイジェリアはブラジル以上のフィジカルな戦いを挑んでくるチームだが、「耐えて逆転する」という「力道山サッカー」がまた実るのではないか。
そして、谷川とともに、この試合の半ばまで右サイドで奮闘した古賀(18歳)、左のアタッカーとして鋭いプレーを見せた浜野まいか(20歳)、さらにこの日は「ベンチ外」となっていた藤野あおば(20歳)といった若い選手たちの活躍が、この大会のなでしこジャパンにとって大きなカギになるのではないか。