■光った個々の対応力

 アメド・ディオマンテ(17番)のミドルシュートを小久保が止めた前半終了間際の決定機、ティエモコ・ディアラ(11番)の突破を高井がペナルティエリア内で勇敢に体を入れて封じた後半11分のシーンなどは、個々の対応力が大いに光った。

 相手エースFWシェイクナ・ドゥンビア(9番)のシュートがポストを叩いたり、鋭い抜け出しがオフサイドになるなど、運にも助けられたが、それも含めて終盤まで無失点を続得た強固な守備があったから、後半37分の山本の一撃につながったのだ。

 3月の時点では、そこまで相手を焦らすような守りはできなかった。大岩監督も「アフリカのチームとやると、間合いであったり、身体能力であったり、足の長さであったりと、戸惑った選手が何人かいた。自分たちはそういう相手にボールを支配し、時間とスペースも支配できるようにならないといけない」と苦言を呈していたほどだ。

 その後、4~5月のAFC・U-23アジアカップ(カタール)制覇を経験し、パリ世代の面々は大きな自信をつけた。この世代はコロナ禍真っ只中に20歳前後の重要な時期を過ごし、国際経験値が明らかに足りないと言われてきた。「自分が世界でどこまでやれるか分からない」と感じていた選手も少なくなかったはずだ。

 それがアジア王者になったことで完全払拭され、「自分たちの世代だけでも十分にやれる」という前向きなマインドに変化した。

 そういった成果もあって、日本は今回、ボール支配率では若干だが相手を上回ることができた。シュート数は11本対15本とマリに多くチャンスを作られたが、最後の最後に川崎颯太(京都)が与えたPKも小久保が堂々と立ちはだかってミスを誘うなど、崖っぷちに立たされてもブレることはなかった。

 藤田も声を枯らして叫び続けていたし、西尾や高井も集中力を切らさなかった。内容・パフォーマンスともに進化を示せたからこそ、日本はパラグアイ・マリに連勝し、早々と決勝トーナメント進出を決めることができたのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3