勇気を振り絞って罠を仕掛けた。3-2とリードして迎えた後半アディショナルタイムの94分。柏レイソルがPKを獲得した大ピンチで、川崎フロンターレの守護神チョン・ソンリョンは、石野智顕GKコーチの言葉を思い出していた。
「PKやFKの情報を石野コーチがいつも共有してくれて、今日も(マテウス・)サヴィオ選手が僕から見て真ん中か左に蹴ってくると。なので、ほんの少しだけ左を空けておいて、最後の最後まで我慢して先に飛ばないようにしました」
柏のMFマテウス・サヴィオはデータ通りに、ソンリョンから見て左側を狙ってきた。しかも、コースがやや甘い。完璧に阻止したソンリョンは次の瞬間、駆け寄ってきたMF大島僚太やMF瀬古樹らに鬼気迫る表情で何かを叫んでいた。
こぼれ球に柏のDF川口尚紀が真っ先に反応してクロスをあげるも、ハンドでPKを献上していたMF橘田健人がブロック。状況が右CKに変わっていたからだ。
「みんなが『よくやった』と言ってきたけど、そんなに時間もなく、次のCKへの準備をしなきゃいけなかったので。そのなかで最後まで集中できたと思います」