■FC東京は荒木遼太郎ら「最強メンバー7人」欠場
リーグ戦を重視してカップ戦ではターンオーバーを使うというのは、世界中どこの国でも見られる一般的な現象だ。
イングランドのFAカップは1871年に始まった世界最古のカップ戦であり、イングランドではカップ戦の注目度は他国よりもはるかに高い。だが、それでもプレミアリーグ勢はカップ戦ではターンオーバーを使うのが当たり前だ。
そして、日本でも、カップ戦である天皇杯では、主力が欠場することは当たり前になっている。
そもそも、たとえば6月12日に行われた2回戦は日本代表の活動期間中に行われたのだから「最強メンバー」は組めない日程だった。ワールドカップ予選を戦ったA代表だけでなく、オリンピックを目指すU-23代表は強化試合のためにアメリカ遠征中であり、U-19代表はモーリスレベロ・トーナメント(旧トゥーロン国際)出場のためにフランス遠征中だった。
そのため、たとえばFC東京はA代表に1人(長友佑都)、U-23代表に4人(野澤大志ブランドン、バングーナガンデ佳史扶、松木玖生、荒木遼太郎)、U-19代表に2人(後藤亘、佐藤龍之介)が選抜されていた。
そのため、佐藤は「チーム事情のため」急遽帰国して天皇杯2回戦のヴィアティン三重戦に出場することになった。そのV三重戦には佐藤以外にも20歳の俵積田晃太と野澤零温が先発し、18歳の永野修都、17歳の尾谷ディヴァインチネドゥが交代出場した。
JFLも最近は競技力が上がっており、こうした若手選手たちはあまり活躍できず、FC東京はベテランの小泉慶や原川力、東慶悟らの活躍で勝利した。だが、20歳以下の選手たちにとっては、よい経験になったはずだ(俵積田は、すでにJ1リーグでもレギュラー格だが)。とくに、17歳の佐藤にとっては90分間フル出場は大きな経験となったはずだ。
つまり、リーグ戦を重視し、天皇杯にはターンオーバーを使うことによって天皇杯は若手選手に出場機会が与えられる。ルヴァンカップは「若手の登竜門」的な位置づけがなされており、わざわざニューヒーロー賞という賞が設定されているくらいだが、天皇杯もそうした若手が経験を積む大会として位置づけられるのかもしれない。