大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第139回【意外と知らない「サッカーの選手交代」起源と進化と現在地】(2) ベッカムFKで薄れた「偉業」と5人制が可能にした「戦術」、ルヴァンカップ「ベンチ入り9人」の画像
脳震とうに関する選手交代では、新たなルールが設けられた。撮影/中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、0から最多7まで増えたもの。

■ベッカム史上「最も有名なFK」

 2001年10月、マンチェスターでのワールドカップ予選に戻ろう。テディ・シェリンガムの劇的な同点ゴール直後にイングランドは再びギリシャにゴールを許し、窮地に立たされる。そして、後半アディショナルタイム。すでにゲルゼンキルヘンで行われた「ドイツ×フィンランド」の試合は0-0のままで終了し、ドイツは勝ち点1を得ている。このままイングランドが敗れればプレーオフに回ることになる。

「4分間」と示されたアディショナルタイムが2分を過ぎたとき、ロングボールを競ったシェリンガムがファウルを受け、イングランドはゴール正面28メートルでFKを得る。蹴るのはもちろん、ベッカムである。ボールは鋭く飛び、曲がり、落ちて、ギリシャゴールの左に突き刺さった。彼のキャリアで最も有名なFKである。

 あまりに劇的なベッカムのゴールにより、シェリンガムの同点ゴールはやや影の薄いものになってしまった。それでも、ワールドカップ出場権をかけた試合での交代後15秒での同点ゴールは、特筆されるべき偉業と言える。

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