■投入後わずか15秒「歩数50歩」未満でゴール
シェリンガムはタッチラインとハーフラインの交点からピッチに入り、ゆっくりとギリシャのペナルティーエリア前に走っていく。そしてペナルティーアーク(ペナルティエリアの外にある半円)に達したとき、いきなり角度を変えて左に、すなわちニアポスト前にダッシュした。そこにベッカムの正確無比なキックがくる。右ひざを上げ、左足1本で踏み切って高くジャンプするシェリンガム。その後頭部に当たったボールは、孤を描いてギリシャゴールに吸い込まれたのである。
交代で入ってわずか15秒、ピッチに足を踏み入れてから同点ゴールを決めるまで、その歩数は50歩にも満たなかったという。
シェリンガムはまさに「スーパーサブ」だった。その2年前、バルセロナで行われたUEFAチャンピオンズリーグの決勝戦でも、彼はマンチェスター・ユナイテッドで歴史的な同点、逆転劇の主役を演じている。ドイツのバイエルン・ミュンヘンに0-1とリードされ、苦しんだ試合。この試合でも、シェリンガムは後半22分に交代で投入され、後半アディショナルタイムに入ってすぐ、ライアン・ギグスのシュートにゴール前で合わせて叩き込み、同点。2分後には、ベッカムの左CKをニアポストで合わせると、そのボールをファーポスト前にいたオーレグンナー・スールシャールが反応してゴールに流し込み、あまりにも劇的な逆転勝利となったのだ。