■トップクラスと以外で「違うゲーム」に

 そしてVARシステムは機械を使うので、支障が起こることもある。2023年J1リーグのアルビレックス新潟×柏レイソル(5月7日)では、VARに必要な機材を積んだ車両が手配ミスで試合会場に届かず、両クラブの了解を得てVARなしで試合が行われたこともあった。

 何よりも問題なのは、VARは非常に費用のかかるシステムであり、日本でも導入されているのはJ1のほか、重要な大会の決勝戦などに限られていることだ。トップクラスのサッカーとそれ以外で実質的に「違うゲーム」になっていることの違和感は小さくない。

 もちろん、VARで救われることもある。ピッチ上の審判員たちがまったく気づかなかった重大な違反行為がVARによって明らかにされ、退場やPKなどという形で「正義」が実現されることもある。オフサイドかどうかの判定は、時に「このくらいいいのでは」と思う微妙なときもあるが、VARが大きな威力を発揮する場面だ。

 だが、プレミアリーグに「VAR廃止」を提案したプレミアリーグ1部のウォルバーハンプトン・ワンダラーズは、「VAR導入から5年、その将来について建設的で批判的な議論が必要。わずかな精度の向上のために支払う代償は見合うものではない」と、その提案した理由について説明している。ちなみに、この提案は6月6日のプレミアリーグ年次総会で議論されることになっている。

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