■狙いを持った攻めを繰り出そうとしていたが
指揮官はその後も何枚かカードを切り、後半30分からは再び4バックへシフト。乾はボランチに下がったが、中央一辺倒になりがちな攻撃に効果的な変化を与えられなかった。彼自身は時折、外に開いて的確なパス出しなどで違いを作っていたが、どうしてもゴールが遠い。焦燥感も募ったに違いない。
「中で行けそうな場面が何度かあったし、相手も5バックで守っていたので、外からっていうのもなかなか難しかった。ただ、(ドウグラス・)タンキが(後半30分から)入ったことで高さはあったので、それを生かしたいと思ったんですけどね…」と背番号33は狙いを持った攻めを繰り出そうとしていたが、最後の最後まで得点には結びつかなかった。
そして、逆に後半ロスタイムに一瞬のカウンターから伊藤翔の一撃を浴び、0-2でタイムアップの笛。清水は7連勝がストップし、乾自身も復帰戦を飾ることができなかった。
「自分が帰ってきて敗戦というのはすごく責任を感じてますし、ここで連敗をしないことが大事。勝って修正していくことが一番なので、次に向けてしっかりまた準備したいですね」と彼は改めて気合を入れた。
35歳のベテランが並々ならぬ意欲を示すのも、同日に日本代表時代の盟友・岡崎慎司(シントトロイデン)の現役ラストマッチがあったことが大きいようだ。
「試合自体は見られなかったけど、全員が整列して花道を作ったところは見ました。岡ちゃんはホントに愛されてますよね。自分ももうすぐ(引退)ですけど、できる限り、頑張りたい」と乾はしみじみと発言。自分がピッチで戦えるうちに清水の名門復活を果たし、恩返ししたいと考えているはずだ。
やはりここからの立て直しには、稀代のテクニシャンの底力が重要。いち早くコンディションを引き上げ、ゴールを奪ってほしいものである。
(取材・文/元川悦子)