■「選択肢を多く与えた」

 遠野が言及した「選択肢を多く与えた」の意味がここにある。3人のうちの誰かへ絶妙のボールを落とすと思われた次の瞬間、ゴミスは別のプレーを選んだ。

 逆時計回りのターンで家泉のマークを外して前へ出たゴミスは、迷わずに右足を振り抜いた。ゴール左隅へ突き刺さった強烈な先制ゴールは、昨夏の加入から通算13試合目にしてようやく生まれた、待望の来日初ゴールでもあった。

 ゴミスがシュートを打つと予測していたのか、と問われた遠野は「いや……」と想定外のプレーだったと暗ににじませながら、こう続けた。

「でも、うまいですよね。あの形は練習でもよく見せる。もっと当ててくれとか、周りをもっと動いてくれとよく要求されるので、それがあっていまがあると思う」

 ボールキープに絶対の自信を持つからこその要求。もちろん札幌側も、ゴミスの特長は把握していた。ゴミスのマークを託された家泉もこう語る。

「背負った体勢で強いのはわかっていた。そこで簡単に前を向かれないように、というのと、ポストプレーがうまいので全員で対応していこうと話していた」

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