川崎フロンターレ陣内を右から左へ、背番号「10」がドリブルで進んでいたときには、浦和レッズのゴールが生まれる予感はまったく漂ってこなかった。
しかし、FW中島翔哉が急停止し、素早い切り返しから川崎のキャプテン、MF脇坂泰斗のマークを外したわずか数秒後に川崎のゴールネットが揺れた。
敵地Uvanceとどろきスタジアムに乗り込んだ3日の一戦。35分に生まれたFW大久保智明の同点ゴールをアシストしたのは、元日本代表の「10番」だった。
中島の右足から放たれたクロスが美しい弧を描きながら、ファーへ走り込んできた大久保の軌道とピンポイントで一致。MF遠野大弥と激しく競り合いながら、大久保は頭ひとつ分も高い打点から強烈なヘディングシュートを叩きつけた。
「翔哉くんはああいう場面で、相手が最も怖がるプレーを選択してくれる。僕もああいった斜めのランニングをすごく意識しているので、呼び込んだというか、翔哉くんも僕が走ると思っていたはずだし、僕も来ると思っていました」
大久保が以心伝心のゴールだったと振り返る。ならば、中島の視界にはどのような景色が映っていたのか。中島は「適当なクロスではない」とこう続けた。
「チアゴ(・サンタナ)がいるので、その裏という感じで狙いました。(大久保が)走り込んでいたので、そこへパスを出した、という感じです」