■オーバーエイジ枠で呼ぶべき「頼れるベテラン」

 さらに、オリンピック本大会に関しては、オーバーエイジを3人招集することになるが、これも非常に難しい問題となる。

 2021年の東京オリンピックでは吉田麻也酒井宏樹遠藤航という、当時のA代表の主力が参加したが、これは開催国だったことによる特例と考えたほうがいいだろう。しかも、当時カタール・ワールドカップを目指していたA代表と東京オリンピック代表の監督は森保監督が兼任しており、オーバーエイジ組が参加することがA代表強化にも直結していた。

 だが、今回は先ほども紹介したように、A代表の選手に過剰な負担を要求すべき時期ではない。そうなると、たとえば吉田麻也や大迫勇也といった、最近はA代表に招集されていないベテラン勢の起用も考えられる。

 U-23アジアカップのグループリーグでは得点が生まれないことでかなり苦しみ、そして準々決勝と準決勝で結果を出した細谷真大にとって、この大会は大きな飛躍のきっかけとなるかもしれない大会となった。

 しかし、ワントップを細谷だけに託すには、好不調の波が大きすぎるような気もする。

 有名な「ケチャップ理論」というものがあるが、FWの選手には、ゴールを決められない時期も当然ある。しかし、そんな時期でもワントップには前線でボールを収めて攻撃の起点を作るという重要な仕事があるのだ。

 だが、グループリーグの試合を見ていると、細谷はそこまでの仕事はこなせていなかった。

 そういう意味で、点を決めた試合でも、また決められなかった試合でも、大迫は前線でボールを収めて時間を作り、無理なロングボールでもなんとか味方につなぐという仕事をコンスタントにこなせている。

 大迫が入ればオリンピック・チームの戦力は間違いなくアップするだろうし、同時に大迫のそばでプレーすることは細谷にとっても貴重な経験となるかもしれない。

 ただし、J1リーグで優勝争いをしているヴィッセル神戸にしてみれば、オリンピック世代ではない大迫を数週間、離脱させられるのは納得できないことかもしれないし、大迫本人にオリンピック出場のモチベーションがなければ、招集はすべきできないのだろうが。

 いずれにしても、大岩剛監督にとってパリ・オリンピックに向けてのチーム作りの仕上げ段階にはあらゆる意味での難問が山積しているが、そうした問題を処理して最高のチームを作ってもらいたいものだ。

 そして、海外クラブとの交渉をはじめ、日本サッカー協会にはU-23代表を全面的にバックアップしてもらいたい。

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