■虚を突いたストライカーの行動
FW前田直輝とMF伊藤敦樹がハイプレスを連動させて、名古屋を右サイドの奥深くに追い込む。MF米本拓司が何とか前へ浮き球のパスを蹴り出したが、ターゲットとなったMF和泉竜司にも石原が重圧をかけてプレーを限定させた。
和泉は自軍のゴール前のMF稲垣祥へ、頭でボールを繋ぐしかなかった。次の瞬間、待っていましたとばかりに今度は安居が稲垣との間合いを詰めた。
「あそこに(和泉のパスが)出てくるかな、というイメージがあったので。自由にやらせないようにしようと意識して、(稲垣に)詰めていった感じですね」
稲垣は利き足と逆の左足で大きく蹴ろうとした。しかし、ボールはほぼ真上に浮いてしまう。誰よりも早く落下点に入ったのはFWチアゴ・サンタナ。相手ゴールに背を向けた体勢で、ブラジル人ストライカーは想定外のプレーを見せた。
「自分のなかでちょっと意外だったというか、正直、前へパスを出すとは思わなかった。後ろで繋ぐと思っていたし、あれがストライカーの考え方なのかな、と」
ボールの落ち際で、サンタナは右足を駆使して自身の背中越しへパスを出した。虚を突かれた稲垣に当たってこぼれたボールに、誰よりも早く反応したのは安居。そのまま抜け出し、左足で名古屋の守護神ランゲラックの牙城に風穴を開けた。
「ちょっと遅れましたけど、それでもあそこに走り込めたのがよかったと思っています。ちょうどスペースが見えたので、あとはボールを流し込むだけでした」