■アカデミースタッフの人的交流も

 自分たちのチームに合った外国人選手を、自分たちでも獲得できるようにする。ヨーロッパのクラブへ移籍した自チームの選手を追跡し、彼らが豊かなキャリアを築けるようにする。ウルブスとのパートナーシップ締結にはそうした目的があり、眞壁会長は人的交流にも意欲的だ。

「アカデミーのコーチ陣は、本人の希望があればぜひ行かせたいですね。それも、短期ではなく年間単位で。サッカー界がヨーロッパを中心に動いているのなら、そことつながりを持つクラブを増やし、そこで働く日本人を増やさなきゃいけない、と思うんです。中田英寿と遠藤航を輩出したクラブとして、世界で認知してもらえるようにしていきたい。このパートナーシップ締結を、そのきっかけにしたいですね」

 プレミアリーグ以外のクラブとの提携も、将来的には視野に入れる。今回のパートナーシップ締結のプロセスでは、ウルブス、オーナー会社のトップと話し合いを重ねていった。信頼関係を構築しており、認識のズレはない。

「ヨーロッパのスタンダードは変わっていきます。情報のキャッチボールをしていかないと、世界からおいていかれてしまう。まずは付き合ってみて、そのネットワークのなかから海外との距離を近づけていく。地理的、時間的なものはどうしようもないけれど、パソコンも電話もあるんだから情報の距離を近づけていくことが、育成を大切にしている我々のようなクラブには大事なんです」

 代表クラスの即戦力を補強するわけではないから、すぐに成果が表われるものではない。「時間はかかります」と眞壁会長も言う。

「選手が海外へステップアップするチャンスを、クラブとして持つ。行った選手もきちんとフォローする。それによってまた、高卒や大卒、あるいは他クラブの選手がベルマーレを選んでくれる。育成年代の選手たちが、我々のクラブでやりたいと思ってくれる。そういうサイクルを、作り上げていければ」

 5年後、10年後、遠藤航のようなキャリアを築く選手が、湘南から再び輩出されているのか。スケールの大きなプロジェクトが、静かに動き出した。

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