開幕戦から白星を積み重ね、J1リーグを初めて制した昨シーズンから数えて42試合目。ヴィッセル神戸は初めてとなる戦い方を余儀なくされていた。
横浜F・マリノスとの前節で右足首を痛め、65分に退場したFW大迫勇也が先発どころか、ベンチ入りメンバーにも名を連ねていない。首位に立つFC町田ゼルビアと国立競技場で対峙した13日の第8節。神戸は非常事態を迎えていた。
「もちろんサコ(大迫)がいてくれれば存在感を放ってくれるし、チームのプラスになるけど、いなければいる選手で対策を考える。それだけでした」(吉田孝行監督)
ハイプレスを連動させて相手ボールを奪い、素早く大迫に預けて起点を作る。大前提の選手がいない。従来の戦い方ができない町田戦で指揮官が選んだのは、攻撃時に左から佐々木大樹、宮代大聖、そして武藤嘉紀が並ぶ変則3トップだった。
初めて組む3人に与えられたタスクを、DF酒井高徳が説明してくれた。
「スピード感を持って前へ仕掛けられる3人だし、どちらかと言うと3人が流れながら、それもやみくもに行くのではなく距離感を近く取った形で、連動性をしっかりと持ってスムーズにカウンターで攻められていたと思う」
その上で武藤が、昨シーズンからの約束事をあえて封印したと明かした。
「いつもならば相手ボールのときにハイプレスを仕掛けていくけど、今回は相手の戦術に合わせて、相手のよさを消して、なおかつ僕らがボールを奪った後はカウンターで攻めていく。そのためにも、チーム全体をよりコンパクトにしました」