■神戸が描いた町田対策

 前へ出てくる相手と入れ替わる目的のもと、町田はまず最終ラインからロングボールを供給。球際の激しさを生かしてセカンドボールを奪い、手薄になった敵陣へ攻め込み、十八番でもあるロングスローを含めたセットプレーも多用してくる。

 神戸が描いた町田対策は、ロングボールは蹴らせてもいいから、セカンドボールを争える枚数をまず増やす。次に球際の攻防で絶対に勝つ、を合言葉にセカンドボールの回収率を高めて変則3トップに託し、前がかりになった町田をひっくり返す――青写真が均衡を破る先制点として具現化されたのが45分だった。

 町田のGK福井光輝のロングキックを、身長194cmのFWオ・セフンが頭でさらに前方へすらす。しかし、最終ラインでDF初瀬亮がはね返した。

 次の瞬間、初先発のルーキー、MF山内翔が町田のMF仙頭啓矢と激しく接触。ボールを渡さず、逆に相手をピッチに転がした。さらにこぼれたボールを、DFドレシェヴィッチと争った宮代が奪い取ってカウンターを発動させた。

 予想通りに、町田の最終ラインの後方には大きなスペースが広がっていた。右サイドへドリブルしながら、ペナルティーエリア内へ侵入した宮代はヒールで以心伝心のパスを武藤へ送る。武藤のシュートは相手にブロックされたが、はね返ったボールに自ら詰める。町田のDF林幸多郎と争った直後に、ボールは左へと流れた。

 そこには仙頭と接触した後も、自陣からフォローしてきた山内がいた。
「ボールが流れてきたなかで時間もあって、周りの状況というのもすごくクリアに見えていたので、自分が狙った通りの場所にうまく流し込めました」

 慌てて飛び込んできたDF鈴木準弥のブロックも間に合わない。右足のインフロント気味にかけた、丁寧なシュートがゴール右に突き刺さった瞬間、武器のハイプレスを封印し、肉を切らせて骨を断つ戦法に出た町田が完全に主導権を握った。

(取材・文/藤江直人)

(後編へ続く)

(2)へ続く
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