9分と表示されたアディショナルタイム。2つのチームにとって捉え方の異なるこの長くも短い時間を制したのは韓国だった。試合終了のホイッスルが響き渡ると、赤いユニフォームを着た選手は次々とピッチに倒れこむ。喜ぶ余裕もないほどの疲労感が、体を支配していた。
パリ五輪最終予選を兼ねたU―23アジアカップ。グループステージ第3戦で日本代表が対戦したのは韓国代表。ここまでの勝点・得点・失点のいずれもが同じということで、順位決定のために引き分けという結果を用意されない試合となった。仮に時間内に勝敗がつかなければ、PK戦を用いてでも白黒をはっきりとさせる。すでにグループステージの突破を決めていながらも勝敗を争わなければいけないという、特異なレギュレーションの中で、両チームは戦った。
そんな試合に大岩剛監督が送り込んだメンバーは、第2戦の先発メンバーから7人が入れ替わった。GKもここまで2戦を守っていた小久保玲央ブライアンから、野澤大志ブランドンに変更。とはいえ、決勝トーナメントでのPK戦を見据えればこれは順当なものと言えた。勝敗が天国と地獄のように大きな意味を持つ今後の戦いにおいて、少しでも情報を残したくないからだ。
さらに、ここまで出場機会のなかった田中聡を先発メンバーに入れ、現役大学生の内野航太郎を1トップとして最前線に置いた。ついに復帰が叶った半田陸も右SBに入った。大胆なほどの選手の入れ替えを指揮官は選択した。