■甲府指揮官「選手の奮闘を地元の子どもに…」

 アクセスは抜群、集客力があり、ピッチに対する懸念も消えつつある。サッカースタジアムとしてのただひとつの欠陥は、南側ゴール裏の「サポータースタンド」が分断されること―。ではなぜ、国立競技場を「Jリーグに適していない」と考えるのか。

 それは、Jリーグの存立の根幹をなす「ホームタウン立脚」の考え方に反するものだからだ。FC東京だけでなく、2022年には清水が、2023年には、鹿島、清水、名古屋、そして神戸が国立競技場で「ホームゲーム」を開催した。今年は、鹿島と神戸に加え、横浜FMも1試合だけだが、国立競技場で開催する。

 その試合を応援するために、ホームタウンのファン・サポーターは入場料金のほかに安くない交通費を負担し、なおかつ。ふだんより長時間をかけて往復しなければならなくなる。

 昨年から今年にかけてのACLで、J2の甲府が国立競技場をホームスタジアムとして使用し、ラウンド16まで進む奮闘を見せたこと、甲府の呼びかけで他のクラブのサポーターも自クラブのユニホームで応援に駆けつけたことなどで、大きな話題となった。だが、それは甲府のJITリサイクルインクスタジアム(小瀬競技場)がACLの基準を満たしていなかったための緊急措置であり、仕方がないことだった。

 それでも篠田善之監督は、「東京での夜間の試合になったことで、地元甲府の子どもたちにヴァンフォーレの選手たちがアジアを相手にいかに奮闘したか見せることができなかったのがとても残念だった」と、「本来の姿」ではなかったことを強調した。

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