■遠くからでも目立つように
チーム全体の合言葉だったタスクを完遂したどころか、脚光まで浴びた選手が誰なのかは一目瞭然だった。千葉市内での合宿中に知り合いを宿泊先のホテルへ呼び、髪の毛を否が応でも目立つ金髪に染め上げていた左ウイングの前田大然が言う。
「相手がアグレッシブに来るのはわかっていたし、そこで自分たちが受けて立ってしまうとアジアカップみたいになってしまう。ずっとハイインテンシティーで戦うのはきついけど、自分にはスピードがあるし、それを生かさないのはもったいないと思っていた。今日はそれ(スピード)をうまく生かせたのかな、と思っている」
絶対的な武器だと自負するスピードと、そして無尽蔵のスタミナはわずか2分後にも発揮される。左サイドバック伊藤洋輝の縦パスが放った瞬間、キムのやや後方にいた前田が約25mを疾走。キムを抜き去り、そのままクロスをあげた。
ファーに詰めたFW上田綺世のシュートは、クロスバーの上を越えた。それでも腰痛で戦線離脱中の三笘薫に代わって左ウイングを務めた前田は、360度方向への爆発的なスプリント力を惜しげもなく発揮。攻守両面で日本をけん引した。
「黒髪のままだと、遠目から見たら誰なのかが自分の子どもにはわからない。嫁は驚いていたけど、子どもはいいと言ってくれたみたいだし、それでいいでしょう」