96分の武藤嘉紀交代とFC東京VSヴィッセル神戸の「失われた30秒」【移籍金154億円ベリンガム事件で浮上した「サッカー・ルール」の落とし穴】(1)の画像
FC東京戦で見事なFKを決めた大迫勇也と96分に交代した武藤嘉紀。撮影:中地拓也

 昨年8月、154億円の移籍金でレアル・マドリードに移籍した、イングランド代表のジュード・ベリンガム。20歳のスーパースターへの処分が今、大きな話題になっている。試合終了間際のゴール取り消しをめぐるものだが、サッカージャーナリスト後藤健生は、その根底にある「アディショナルタイム問題」を指摘する。サッカーのルールは、どうあるべきなのか。

■VARの介入で「追加タイム」が長時間化

 ジュード・ベリンガムの2試合出場停止に対する、レアル・マドリードの不服申し立てが却下され、出場停止処分が確定したという。

 3月2日に行われたラ・リーガ第27節のバレンシア戦。2対2の同点で迎えた後半アディショナルタイムに、ベリンガムがCKからの流れからヘディング・シュートを決めたのだが、ヒル・マンサーノ主審はブラヒム・ディアスがクロスを上げる前に試合終了のホイッスルを吹いていたとして得点を認めず、これに対して抗議を行ったベリンガムに対して「侮辱的な言葉を発した」としてレッドカードが提示されていたのだ。

 今回、取り上げるのはベリンガムの退場処分についてではない。だから、ベリンガムがどのような言葉を口にしたのかということはまったく別問題だ。

 取り上げたいのは試合終了のホイッスルの部分である。

 サッカーにおける時間の管理の仕方が非常に曖昧であり、それが今回のような事態を招いたのではないだろうか?

 とくに、2022年のワールドカップでFIFAが試合が中断した場合にアディショナルタイムを厳格に取るようにと指示を行った結果、VARがますます頻繁に介入するようになっていることと相まって、長時間のアディショナルタイムが取られることが増えている。

 しかし、それにしては「アディショナルタイムの取り方はあまりにも恣意的なのではないのか?」という疑問を抱かざるを得ないのだ。

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